虚無の上澄み

旧枠モダンなど、カジュアルなMtG関係の日記(?)…のはずだったんだけどなあ…。

【旧枠モダン】BGランデスはかくして敗北した

 これだけは書き残さなければならない。そう思いながら気付けば半年以上もの時間が過ぎた。昨年末に実施された第10回GP旧枠モダンに持ち込んだデッキ、BGランデスは如何にして敗北を重ねていったのか。自らを省みるためにも、今回は、あらためて解説を残したい。

 

目次

1.デッキリスト

2.コンセプト、あるいは絵に描いた餅

3.実態

4.おわりに

 

1.デッキリスト

 まずはデッキリストから見ていただきたい。

 こちらが持ち込んだBGランデスのリストになる。マナクリーチャーによるマナジャンプから、《涙の雨》《陰謀団の先手ブレイズ》《すき込み》と繋ぐことで強固なマナロックをかけ、相手にゲームをさせないことが目的となる。こう書けばとても強そうではあるが、このデッキは見た通りの数多の問題を孕んでいた。

 

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2.コンセプト、あるいは絵に描いた餅

 コンセプトは先述した通り、執拗なまでのランデスにより一方的にゲームを展開することにある。その中核となるのがブレイズであり、言うところのノワール*1の派生にあたるデッキだ。

 

 ブレイズを採用する以上、自身のクリーチャーや土地の場持ちには期待できない。そのため、《極楽鳥》や《深き闇のエルフ》と言った本来なら優先して採用したいカードを押しのけて、ブレイズ影響下にあっても生贄に捧げた際にマナベースへのダメージのない《エルフの開拓者》を採用しているのが大きな特徴だ。EtB能力持ちでアドバンテージを誤魔化すノワールのセオリーにも適していたし、パーマネントの水増しという点でも相性が良かった。

自身がマナソースかどうか、その違いが活きてくる。

 マナジャンプしてからは3、4、5とマナカーブに沿った動きをしていくのが理想の展開。各マナ域にランデスを中心としたボードへ干渉する呪文が多く搭載され一方的にビッグアクションを仕掛けることがこのデッキのコンセプトとなる

4ターン目までに4ランデス、以後はブレイズでロックする。

 ランデスデッキの常として、溜まっていく相手のハンドをどう処理するかも一つの問題だ。従来、自身が採用してきた《惑乱の死霊》では遅くかつブレイズの影響で十分に活躍させることは難しいだろうし、《貪欲なるネズミ》や《堕落した廷臣》ではあまりにも小規模。《迫害》は近年の多色環境において確実性に欠けることは明らかで、何より土地が残ってしまう点が採用を敬遠させた。《精神ヘドロ》はマナカーブとしては理想的だが、沼の数を参照する性質上安定しないことは間違いない。そこで白羽の矢が立ったのが《精神を刻むもの》だ。

神ではない

 4/3というこのデッキに不足していたパンチ力を担うとともに、自らのハンドを巻き込むとはいえ一度の誘発で相手の溜まったハンドを根こそぎ持っていけるのが何よりも重要で、維持する必要もなくむしろ積極的に生贄に捧げに行くカードであると、条件を満たすとても魅力的な選択肢に思えた。

 

 その他のカードについては無難な選択なので割愛したい。が、そこにも大きな問題は残されていた。

 

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3.実態

 さて、ここまでとても強そうなことを書いてきたが、現実そううまく行くわけもないのである。当日まで見落としていた、いや、見て見ぬふりをしてきたこのデッキの弱点の数々は、黒星という形で自分に現実を突きつけてきた。

 

薄氷の上の"婦人"

 そもそも《陰謀団の先手ブレイズ》という唯一性が高い癖に場持ちの悪いカードに依存した構築が間違っている。2/2というサイズは黒い4マナという点以外なんの除去体制も持たない*2ブレイズ展開前にいくら土地を割っていようが、赤マナたった一つから除去され得るのだ。また、能力の性質上ブレイズを維持する限り自身もリソースを伸ばせなくなる。結果として、一方的にビッグアクションを起こそうにもそれだけのリソースを確保できない場面のほうが多かったことは言うまでもないだろう。つまりは、コンセプトからして破綻していたのだった。

 何よりも足を引っ張ったのがワガママを叶えてくれたように感じた《エルフの開拓者》で、単にマナを伸ばそうにも基本土地を握っている必要があり、終盤に至っては《脱走魔術師》*3と化す。また、二ターン目に《涙の雨》を唱える理想の展開をするためには最低1枚の基本土地に黒マナソース二つを含んだ土地三枚が必要となるが、その組み合わせはそう多くはない。開拓者を含めて既に四枚のマナソースを要求しているマナフラッド具合も大きな問題で、総合的に見て弱い初手をキープすることを強いられる。加えて言えばパーマネントの水増しという点もリソースを前借しているに過ぎず、展開は直ぐに頭打ちとなる。ブレイズとの相性一点買いで採用した開拓者でのマナ加速の安定を目指した結果、デッキ自体の安定性が損なわれたのは本末転倒と言わざるを得ないだろう。

《極楽鳥》等を採用したほうが動きやすいのは確定的にあきらか

 次に挙げられるのは《獣群の呼び声》の不採用にはじまり《ファイレクシアの憤怒鬼》よりも《花の壁》を優先して採用していたりと、土地ロックに主眼を置きすぎたためにその後のことを全く考えていなかったことが伺えるビートダウン性能の低さだ。前述の二つの問題もこの点を際立たせ、十分なクロックを用意できないために相手に猶予を与えてしまっていた。勝ち切れないのだ。

 4/3のサイズから打点としても期待された《精神を刻むもの》だが、そもそも死ぬことが仕事の奴に打点は期待できないのである。不意の除去で自身の有効牌を失ってしまうことも問題で、インスタント除去の様な抱えておきたいカードとの相性は最悪だった。

 

 サイドにも目を向けて行こう。ブレイズを維持し蓋をすることに意識を持って行かれすぎていたことは既に明白だが、ブレイズを過信し、巻き込むような全体除去の採用すらためらってしまったことも大きな問題だった。当然だが、ブレイズ自体は互いのリソース差を開くようなカードではない、如何にして誤魔化すかがカギとなるカードだ。つまり、先んじて《包囲攻撃の司令官》等でパーマネントを展開しているような相手ならブレイズよりも全体除去を優先すべきなのである。*4その点を理解せずに申し訳程度に採用された《雹の嵐》では盤面を覆すこと等到底出来ず、当然プレイする機会もなかった。

 

 この様に、土地ロックどころかデッキ自体が不安定で打点にも乏しいために盤面の有利を構築しづらく、一度不利になればそれを覆すことも出来ないのが此度のBGランデスの実態だ。重ねた黒星の数々のどれもが、これらの問題に起因していたのは間違いない。

 

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4.おわりに

 BGランデスは自分が旧モで擦り続けているデッキ*5で、このフォーマットにおいては誰よりも愛着があると思う。だからきっと今後もこのアーキタイプを手に取ると思うが、今回のアプローチは明確に失敗だと言える無残極まりない物となってしまった。自らを戒めるとともに、先駆者として、同じ轍を踏む者が現れないことを祈るばかりである。

 

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*1:ODY期スタンダードに存在したデッキ。旧枠モダンでは主に黒赤の二色で組まれる。

*2:黒い4マナクリーチャーは《恐怖》系の除去でも《燻し》でも除去できない。ブレイズがアンチ黒足り得る点でもある。

*3:1マナ1/1バニラ。旧モで使える。

*4:そも、ギャンコマに対処できないデッキはデッキではない。

*5:過去の記事を参照のこと